いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

おうち焼き肉

寝室を出ると、もわんとした匂いが鼻孔をついた。


リビングに入るとその匂いは更に強くなる。香ばしさと仄かな甘みを含んだ焼けた脂の匂い。そう、昨晩は家の中で焼き肉をしたのだ。


外に出られない分、せめて食事くらいはと少し贅沢をした。妻の援助で九州から長いこと来てくれているお義母さんへの労いの念も込めていた。


牛肉4種類と豚バラを買ってきた。妻たちが野菜も切ってくれて、なかなか立派な食材たちが並んだ。食卓にホットプレートを置いて、じゅうじゅうと焼き始めた。


肉はテンポ良く減っていき、すべてが無くなる頃には腹に満足感が溜まっていた。最後の野菜も食べきり、空いたプレートでは、締めに焼きおにぎりをつくった。


食後は皆が皆、愉悦の表情を浮かべ気持ちよく腹をさすっていた。お義母さんは大好きなビールも飲むことができてご満悦な様子だった。ただ、換気扇を回していたはずなのに、室内には香ばしい匂いが立ちこめていた。


しばし休んだ後は各々に動き出した。プレートを洗ったり、床に飛んだ油を拭いたり、カーテンに消臭スプレーをふりかけたり。できる限りのことをしたつもりだが、やはり匂いはそう簡単には落ちてくれない。今日一日をかけて、徐々に元通りになればいいのだけど。


それにしても楽しい夕食だった。やはり美味しい物は人を幸せにしてくれる。たまには贅沢もするべきだろう。