いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

大きくなったら乗れるもの

娘が目盛りの前に立たされ、頭の上に手を置かれる。 「大丈夫ですね、じゃあどうぞ」 身長制限を無事クリアしたのだ。娘が駆けだし、正面にあったライドに乗り込む。もたつくところに手を貸し、しっかりと椅子に座らせる。私も隣の席に座った。 アナウンスが…

うちの娘

どの父親もそうだろうが、娘ほど可愛いものはない。 娘の顔を思い浮かべるだけで身体の芯がぽかぽかしてくる。一緒にいるとき、ついその顔に見入ってしまうことがある。ふとした瞬間に意味もなく抱きしめてしまう。 うちの娘はカワウソ顔だ。それもとびっき…

キビキビ

前日に「キビキビしてる」と妻に指摘されたことで、昨日は会社でもたびたびそのことを意識させられた。 言われてみればそうかもしれない。会社では普段からキビキビと振る舞おうとしている気がする。なにより仕事において言えば、私はキビキビした人が好きな…

かけよる癒し

職場はたまに行く分には楽しい場所だ。 昨日は一ヶ月以上ぶりに職場で仕事を行った。各担当、当番での出社となっているため、フロアを見渡しても人はまばらだった。すれ違う際には「久しぶり」と声をかけあい、友人に会うかのように同僚との再会を喜んだ。 …

剃り落とし

先程すべての髭を剃り落とした。 今日、一ヶ月ぶりに出社するからだ。その間伸ばしていた顎髭を剃り終わると、やけに顔が丸くなったように感じた。黒い髭が輪郭を引き締めて見せていたのだろう。 緊急事態宣言が解除されたが、我が社では今月末まで在宅勤務…

バースデイ・ストーリーズ

村上春樹編訳『バースデイ・ストーリーズ』を読了。村上がセレクト&翻訳した短篇小説が十三篇収録されている。ちなみに最後の一篇は村上自身が書いた物語だ。 アンソロジーは当たり外れがあることも多いのだが、今作はどの話も安定して面白かった。さぞ選り…

ベランダを敷き詰めて

ベランダの敷き詰め作業が完了した。 昨日、追加で発注していたタイルが届いたのだ。芝生の領域を増やし、ウッドタイルを隙間に敷き詰めた。 ベランダに合わせて敷き詰める為には、一部のタイルを切って調節する必要があった。芝生の上に座り、段ボールナイ…

サン、サン、サン

とんとんと肩を叩かれ、娘に起こされた。 意識の回路が四方八方にちらばっていて、つなぎ合わせるのにはしばし時間がかかった。そこはテントの中で、入り口からは陽の光が差し込んでいる。側には妻と娘が座っていて、私だけが寝ころんでいるようだ。 そうか…

スペシャルステージ

我が家には『スペシャルステージ』という遊びがある。 娘が発案したものだ。いつも唐突に娘が言い出すのであった。「ぱぱ、すぺしゃるすてーじ、やろうよ!」と。 そんなわけで昨日もステージが開かれた。私は観客としてベッドの上に座り、娘の登場を待って…

【愛読書】大いなる眠り

レイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り』を再読。チャンドラー作品の中で私が最も好きな作品だ。訳者の村上は『ロング・グッドバイ』の方が上だと語るが、私はチャンドラー長篇の処女作であるこちらを推す。 私立探偵フィリップ・マーロウが初めて登場し…

身長を伸ばすためだけの手段

娘の身長が伸びているようだ。 リビングの柱には、目安となるようマスキングテープを貼っている。ご飯を食べ終わると娘はしばしばその前に立ち、頭の上に手を置いてと私たちにせがんでくる。昨夜は、遂にそのテープの上にまで手がかかった。 娘はそのことが…

安らぎの時間

妊婦は足にくるらしい。 それゆえ最近、寝る前に妻の足をマッサージすることが増えた。オイルを塗りふくらはぎの辺りを揉みほぐす。 その間、娘はリビングでテレビを観ているが、しばしば私を連れ出そうと寝室まで呼びに来る。妻は「少しだけよ」と言い、娘…

初めてのZOOM飲み

昨日は初めてZOOM飲みというものをした。 きっかけは元同期からのLINEだった。昼食前に連絡がきて、ZOOMランチに誘われた。教えられるがままにアプリをインストールし、昼食のときにそれを使った。 久しぶりの再会に話は弾み、別途メンバを集めて『夜の部』…

叱ること、褒めること

子供は日々変化する。そう書くと、誇張しているような気にもなるが、少なくとも二三日単位では変化がある。 GWや在宅勤務で、娘の一日を長期間見守るようになってからは、そのことをより強く実感している。うちの娘の場合は『叱ること』と『褒めること』によ…

第一回 名前付け会議

少し前のことだが、赤ちゃんの性別が判明した。 それに伴い、昨日は妻と『第一回 名前付け会議』を開催した。出産予定の九月より前に、最終決定をめざす。 それぞれに紙を一枚配布し、現時点でのアイデアを列挙していった。一回目なので、使いたい漢字でもよ…

中国行きのスロウ・ボート

村上春樹の『中国行きのスロウ・ボート』を読了。今作は村上が最初に出した短編集らしい。村上作品は学生時代にそのほとんどを読み漁っていたのだが、今作はその不思議なタイトルもあり、手をつけずにいた。 しかし、少し前に『村上ソングス』を読み、そのタ…

髭ダンディズム・改

顎髭を残して口髭を剃った。 口周りの際にまで生えてきて限界だったのだ。カレーや納豆を食べるときが最悪で、髭を拭うたび不潔感に苛まれた。一新された見た目は、怖役の山田孝之のようだ。口髭を剃っただけでまたガラリと印象が変わる。野蛮さは鳴りを潜め…

じっと手を見る

窪美澄の『じっと手を見る』を読了した。久しぶりに大衆向けと呼べる小説を読んだ気がする。彼女の作品は読みやすいながらも、しっとりと胸に訴えかけてくるものがあるから好きだ。 今作は直木賞の候補にもなったので、期待して読んだ。作者の魅力が存分に現…

家での仕事、穏やかなる日々

悠々とした在宅勤務の日々が続いている。 このような状況下で我ながら不謹慎だぞと頭をよぎるのだが、そうであるのだから仕方がない。ただしリモートアクセスの設備増強を待つ間、会社からは不規則な勤務形態が指示されている。 昨日までは早朝に仕事し、午…

レイモンド・カーヴァーの『象』を読了した。カーヴァー最期の短編集だ。作品を追う毎に短篇小説の書き方が私好みに変化していた作者だったので、彼の作品の“最終系”を確認するのを楽しみにして読んだ。 期待していたとおり、とても私好みの短編集であった。…

マジック

娘が三方向に深々と頭を下げる。 口元には笑みを携え、その仰々しい立ち振る舞いはどこか滑稽さを纏わせている。私と妻がそれに拍手を送る。 娘は片手にハンドタオル、もう片方にはオモチャのマイクを持っている。まずはマイクを置き、そこにゆっくりとタオ…

夜ひとりで寝る刑

娘が寝る前に大泣きした。嗚咽混じりの本気のやつだ。 ふざけて夕飯を食べるのに3時間もかかったことを反省させようと、『夜ひとりで寝る刑』を執行していた。 私と妻は寝室に入って鍵をかけた。リビングには娘用の布団が敷かれ、その周りには娘の大好きなぬ…

絵の具あそび

昨日は妻の提案により絵の具で遊んだ。 皆で汚れてもよい格好に着替え、ダイニングテーブルの上に道具類を並べた。私は久しぶりに筆やパレットを見て懐かしい気持ちになった。娘も久々の絵の具あそびにとてもはしゃいでいた。 それぞれに白い画用紙が配られ…

黄昏時

向かいに見えるマンションの網戸たちが、風に吹かれて波打っている。斜めからの夕陽に照らされ、その波立つ陰影がくっきりと視認できた。 うごめく動きがまるで生き物のようで、私はぼんやりとした気持ちで、しばしその網戸の方に目を向けていた。 昼寝から…

ブッチャーズ・クロッシング

ジョン・ウィリアムズの2作目にあたる著書『ブッチャーズ・クロッシング』を読了した。私の愛読書『ストーナー』の著者による作品だ。その世界的ベストセラーにより日本でも二冊目が翻訳された。 一級品の文学作品である。なんと完成された物語だろう。私は…

ステイホーム

昨日は一日中パジャマで過ごしてしまった。 午前中は娘とふたり、主におままごとをして過ごした。昼食を終え、娘が昼寝に入ってからは、ゆっくりと読書を堪能した後に、自らも思うがままに惰眠を貪った。 夕食には宅配ピザを頼み、腹を満たしてからは妻とゲ…

髭ダンディズム

髭面の男が鏡に映っている。私である。 醸し出される妖艶なる雰囲気にしばし目を奪われる。普段の聡明そうな文学顔とは異なり、無骨な男らしさが具わっている。まるでKing Gnuの常田大希ではないか。ドライヤーで髪を乾かすときが一番の見所だ。無造作な乱れ…

731日

このブログをはじめて今日で2年が経った。 目的のひとつである『家族の記録』という意味合いでは、日々充実感を得られている。こんなにも平凡な家庭にも関わらず、幸いにも書くことに困ったことはない。 もちろん、日記をつけていなければすぐに忘れてしまう…

久しぶりにギターを弾いた。

指の面が痛い。撫でると懐かしい感触がある。 昨日、久しぶりにギターを弾いたからだ。弾き始めると楽しくて、思わず何度も手に取り演奏してしまった。きっかけとなったのは前日の掃除だ。引っ越し以来、物置にしていた部屋の片付けに着手したのだ。そのとき…

忘れられた巨人

カズオ・イシグロの『忘れられた巨人』を読了した。イシグロの最新作にして、私にとって最後の未読作品であった。これで現時点で出版されているイシグロ作品は、7冊全てを読み終わり本棚に並べることができた。 前評判で聞いていたとおり、これまでのイシグ…