いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

バースデイ・ストーリーズ

村上春樹編訳『バースデイ・ストーリーズ』を読了。
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村上がセレクト&翻訳した短篇小説が十三篇収録されている。ちなみに最後の一篇は村上自身が書いた物語だ。

 

アンソロジーは当たり外れがあることも多いのだが、今作はどの話も安定して面白かった。さぞ選りすぐりの作品たちなのだろうと思って読んでいたが、訳者の後書きを読む限りでは、かき集めるのに苦労したのだとか。

 

とはいえ、村上のお眼鏡にかなった作品しか残っていないのだろうから、一定のレベルは越えていて当然であろう。また翻訳も上手いので読んでいて心地が良かった。

 

中でも印象深かったのがラッセル・バンクスの『ムーア人』とアンドレア・リーの『バースデイ・プレゼント』、そして村上の書いた『バースデイ・ガール』だ。

 

タイトルの通り、誕生日に纏わる話が集められているのだが、幸福感漂うような話は極めて少ない。寂しさや哀しさに包まれた誕生日、もしくは誕生日に起きたトラブルなどに焦点が当てられており、やはり文学作品というのは“不幸”との方が相性がいいのだな、と再確認した。

 

たまたまだが、自分の誕生日も近かったので、“自らへのプレゼント”としても意識してこの本を読んだ。私自身の誕生日は、ぜんぜん文学的でなんてなくていいから、人並みに平穏な一日が送れることを願っている。