柴田元幸がアメリカの名作中の名作を精選した短編集『アメリカン・マスターピース古典篇』を読了した。
本作はシリーズものであり、待望の次作である『準古典篇』の発売決定を機に購読した。収録作のほとんどは様々な媒体で読んだことがある作品だったものの、タイトルの通り名作揃いのため、一冊としてまとめて読んだ際の満足感は格別なものであった。
そしてどうやら私は、古典的な、少し堅苦しいくらいの格式の高い語り口が好みには合うらしい。時代の流れと共に、いかにも文学っぽいそのような言い回しは減衰していったのだろうと思われるのだが、だからこそ敢えて、現代においてはそのような古風な言い回しが新鮮にさえ思え、その美文調に酔いしれることができるのだと思われる。
また、今回読み返してみて大きく印象が変わったのは、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』である。この作品はミステリ作品にはまっていた学生時代に読んだ。「史上初の推理小説」として知られる本作を、教養の一環として読んでおこうと手に取ったのだった。
しかしその際は当然「推理小説」として読んだものだから、なんとも回りくどい端々の表現が気に触り、ミステリとしての純度の低さに肩すかしを食らった記憶が残っている。でも今回、改めてミステリ要素の入った文学作品として読み直してみるとどうだろうか。その作品性の高さとあまりの面白さに、読みながらに唸ってしまうほどの感動を覚えたのであった。
このほかのポー作品も是非読みたくなってしまったのだが、どうせなら柴田さんの訳で読みたいので、そのようなアンソロジーが組まれる機会があることを期待しようと思う。
その他の作品も、本当にマスターピース揃いで素晴らしい。さらには作品毎に訳者の解説が巻末に掲載されており、併せて読むとよりその作品を立体的に捉え、深く知ることができるのだった。また作品も世に出た年代の順番で収録されているので、アメリカの文学史を辿る上でも有用である。
このシリーズの次回作にあたる『準古典篇』も先日手元に届いたので、引き続きこの傑作の波の流れに身を任せたいと思っている。早く封を切り読み始めよう。