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怒りの葡萄

ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』を読了。
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歴史的名作と言われる本著だが、私は初めて読んだ。作者はノーベル文学賞もとった偉大なる作家である。

 

上巻の100頁あたりまで読むと、その面白さに病みつきになった。翻訳も良いのか、読み心地も抜群で、次々と頁を捲らされた。登場人物たちが魅力的で、情景描写も生彩を放っている。物語も面白いし、構成も見事だ。

 

本著は2つのパートが交互に折り重なるように構成されている。作者自身の表現によると「一般章」と「個別章」である。前者では米国の歴史や経済への言及、過酷な環境や状況を巨視的に、それも多様な語り口で語り、後者では主人公であるジョード家の人々の道中を描く。


この構成が生み出す効果には感銘を受けた。「一般章」が挿入されることで、単に物語を描くだけでは得られない奥行きが生まれている。また規則的に章が挟まれるので、自然と読み進めていくリズムも生まれるのだ。

 

あとがきを読む限り、本作で打ち立てたこの構成は、後年の作家達にも多くの影響を与えたらしい。確かに物語の流れの中に入れると描けないものも、この手法を使えば物語の進行を妨げずに描ける。大発明だと思った。

 

本作は数々の賞を獲得した後、映画化もされ、アカデミー賞も受賞したようだ。Amazonプライムで観られたので小説を読み終えてからすぐに観賞した。原作の方が素晴らしいことは言うまでもないのだが、白黒の古風な映像にも関わらず、最後まで飽きずに観ることができた。

 

それにしても『不朽の名作』というのは本当にすごい。書かれて80年以上経っているというのに、今読んでもこんなにも新鮮な感銘と衝撃を与えてくれるのだから。

 

スタインベックの他の作品も読みたくなった。本作と並び傑作と名高い作品を買ったので、読むのが楽しみだ。