いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

赤い髪の女

オルハン・パムクの『赤い髪の女』を読了。

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ノーベル文学賞作家だが、彼の作品は初めて読む。愛読する本猿さんのブログで興味を持った作家だ。上下巻ものが多い中で、比較的短い本作を選んだ。まずは自分の趣味に合うか、確かめてみたかったからだ。

 

結論からいえば、とても楽しんで読めた。正直、文章に関していえば癖がなく優等生的(それゆえ多少物足りなくも…)だが、作品の構成、物語の意味合いが多重にも折り重なり編まれている様が実に見事で、なるほど、これは芸術性の高い作家だと感心させられた。

 

序盤から中盤にかけては、こんなものかと読み進めていたのだが、終盤にかけてはページを捲る手が早まり、結末に向けどんどんと没入感が高まっていった。

 

最後にはある種の種明かし的に、この本の背景や意味合いが語られ、作品内で出てきたエピソードや人物たち、タイトルや表紙の写真までもが見事に繋がっていく。気持ちの良いカタルシスが得られる瞬間である。

 

まだ一作しか読んでいないので判断はしかねるが、少なくとも次の作品も読んでみたいと思わせてくれる作家ではあった。図書館にもほとんどの作品が置かれていたので、また次の作品を予約して読みたいと思う。