いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

大きくなったら乗れるもの

娘が目盛りの前に立たされ、頭の上に手を置かれる。

 

「大丈夫ですね、じゃあどうぞ」

 

身長制限を無事クリアしたのだ。娘が駆けだし、正面にあったライドに乗り込む。もたつくところに手を貸し、しっかりと椅子に座らせる。私も隣の席に座った。

 

アナウンスが流れ、プルルルといったスタートのベルがなる。席がガクンと揺れ、愉快な音楽と共にライドが上昇を始めた。娘は手すりをぎゅっと握っているようだ。

 

私がペダルを漕ぐ。するとライドが更に上昇する。プシューという機械音がライドに伸びるクレーンから漏れる。空中を旋回し、カメラを構える妻が地上に見えた。

 

隣を見ると、娘は力の入った表情で唇をすぼめ、両手で手すりに掴まっている。「楽しいね」と声をかけてみたが、声が小さかったのか応答は聞こえなかった。私はなおもペダルを漕いで、ライドの上昇下降を繰り返した。

 

終了のベルが鳴り響き、ライドがゆっくりと止まった。係員がベルトを外してくれる。私は娘を抱っこして降ろしてあげる。そこでやっと、娘から笑みがこぼれた。

 

「○○ちゃんのれたよ。でも、すこしだけこわかった」
「すごいね。ママに報告しておいで」

 

すると娘は出口へと向かって駆けだした。柵の外で待つ妻のもとへと走る。妻は娘を笑顔で迎えた。娘は身振り手振りを織り交ぜて、上空からの様子を伝えていた。

 

昨日は、久々にエキスポシティを訪れていた。万博公園に近接する大型複合施設だ。しばらくステイホームをしていたため、実に数ヶ月ぶりの訪問であった。

 

家にこもっている間に娘の身長が伸びた。それにより、以前は乗れなかった屋外アトラクションに乗れるようになっていた。私はこれまでの我慢に対するご褒美も兼ねて、娘に3つものライドに乗せてあげた。

 

娘は乗っている最中は顔を強ばらせていたものの、降りてくると「たのしかった」と言ってくれた。私たちも娘の成長が感じられて、とても感慨深かった。

 

その後、ショッピングモールではたくさんの買い物をし、夕方にはジェラードを皆で食べた。久しぶりに休日らしいお出かけができた気分だった。まだウイルスの恐怖は消えてはいないが、日常よ、徐々に戻っておいで。