いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

マジック

娘が三方向に深々と頭を下げる。

 

口元には笑みを携え、その仰々しい立ち振る舞いはどこか滑稽さを纏わせている。私と妻がそれに拍手を送る。

 

娘は片手にハンドタオル、もう片方にはオモチャのマイクを持っている。まずはマイクを置き、そこにゆっくりとタオルを被せる。そこで視線を我々に向け、浮かべた笑みを深めてみせた。

 

娘はタオルの上空で、両手をくるくると回転させる。魔法をかけているのだ。そして大仰な間をあけた後に、さっとタオルを引く。すると、そこにあったはずのマイクが消えているのだった。

 

私と妻は驚きの声を上げ、すぐさま盛大な拍手を送る。娘は満足そうに頷き、その気持ちよい拍手を全身で浴びる。たっぷりとそれを堪能した後、彼女は両手にもった膨らんだタオルをふたたび目の前に置くのであった。

 

さっとタオルを引く。すると、そこにはマイクが再度出現している。わっと観客が(私と妻だ)沸き、娘はこらえきれずに白い歯を見せて笑うのであった。

 

アニメで見たマジシャンの真似をしているらしい。最初はマイクが消えるカラクリを理解していなかったようだが、私がやって見せるとすぐに理解し習得した。

 

子供だましに過ぎないが、子供がそれをやると愛らしい。また、その立ち振る舞いがなかなか堂に入っていて、見ていてとても面白いのだった。

 

さて、昨日はマジックがもうひとつ起きた。

 

連休明け、私は会社に出社する当番になっていたのだが、代理の申し出があり、それが見事に消滅したのだ。

 

そのため今日も在宅勤務である。予定では月末まで出社する必要はない。よおーし。久々の仕事がんばるぞお。