とんとんと肩を叩かれ、娘に起こされた。
意識の回路が四方八方にちらばっていて、つなぎ合わせるのにはしばし時間がかかった。そこはテントの中で、入り口からは陽の光が差し込んでいる。側には妻と娘が座っていて、私だけが寝ころんでいるようだ。
そうか、緑地公園にピクニックに来ていたのだ。回路が繋がり状況が見えてくる。午前中からテントを張り、昼食代わりにドーナツを食べた。それから娘と虫取りの冒険に出た後、おやつの為にテントまで戻ってきたのだ。
娘がお菓子を食べている間、私はごろんと横になっていた。そしてそのまま寝てしまったのだろう。陽を浴びた青葉の香りに包まれ、ものすごく気持ちがよかった。
「はやくおきて、またおそとにいこうよ」
娘は私の腕を掴み、ぐいぐいと引っ張って起き上がらせようとしている。私は心地よさに引っ張られ、何度も床に顔を沈めたが、最終的には身を起こして靴を履いた。
妻が娘に帽子を被せる。脱いでいた靴下と靴を履かせ、最後に凍らせたポカリを一口飲ませた。「よし、いこーう！」。首から虫かごを下げた娘が、草原へと駆けだしていく。私は少し遅れてそれを追いかけていった。
獣道を抜け、雑木林の中を勇み歩いた。娘は穴の開いた樹には棒っきれをつっこみ、折れ曲がった大木の上にはよじ登った。私も腐葉土っぽい場所を見つけては、土を掘り起こし、そこに面白い虫はいないかと探し続けた。
結局はダンゴムシなどありふれた虫しか見つからなかったのだが、娘との虫探索は楽しかった。娘の虫かごには結局、赤い木の実と大きなどんぐり、黄色い葉っぱが入れられていた。虫を入れるのは、次回に持ち越しだ。
何をしたわけでもないが外遊びはやっぱり楽しい。探し物は見つからなくても、外に出る喜びは沢山見出せた。
