いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

先回り

久しぶりに家族三人で食卓を囲んでいた。

 

ヘルプで来てくれていたお義母さんが、昨日九州に帰ったのである。3週間ものあいだ滞在し、妻の代わりに家事等を手伝ってくれていた。本当に感謝しかない。

 

そんなわけで、昨夜は少し寂しい食卓だったのだが、娘は相変わらず明るかった。そしていつもの如く、ご飯を食べるのがもの凄く遅い。昨夜は席を立つことまではしなかったのだが、それでも椅子の上に立ち上がったり、口をもぐもぐさせながら私にじゃれてきたりしていた。

 

妻と私の食器を片付け終わった頃、もうそろそろ集中して食べさせなければと、意を決して娘の隣に座った。真剣な顔を娘に向ける。スプーンを持って娘の口へと持っていったが、娘は首を振ってそれを拒否した。

 

食べなさい、と私は語気を強めて言った。すると娘はまっすぐに私の方を向いて、こんなことを口にしだした。

 

「え、これたべないと、おっきくなれないの?」
「そうだよ、それに・・・」
「え、おっきくならないと、ゆうえんちのれないの?」
「・・・うん、そう」

 

娘はとても物わかりのよい子のように、私の脅し文句を先回りして述べてきた。見つめるその瞳は、幼少期の芦田愛菜ちゃんを彷彿とさせるような、無垢なようでいてどこか大人側の思惑を見透かしているような、そんな底知れぬ煌めきを奥の方に宿していた。

 

「わかっているなら早く食べなさい!」苦し紛れにそう口にした私に対し、娘は元気よく「はーい!」と応えた。その後も、娘は鼻歌まじりに食事を続けていた。