いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

パパにだけ

ベッドで遊ぶ際、娘は私の身体に飛び乗ってくる。

 

それだけでなく、じゃれ合いながら勢いのあるパンチやキックを浴びせてくるのだった。多少手加減はあるものの、しっかりと“痛い”攻撃だ。昨夜は思わず娘を止め、なんでそんな乱暴をするのかと聞いてみた。

 

「おともだちにしないから、ぱぱにだけだよ!」

 

娘の言い分はこうである。それを聞いて、娘が幼かった頃に彼女に向けて言っていた自分の発言がよみがえってきた。アンパンマンごっこ等をしているときのことだ。

 

私がバイキンマン等の敵役となり、娘の拙い攻撃を受けては、やられた振りをして遊んでいた。そんなとき、お友達に対してはそんなことをしないよう、「こんなことをしていいのはパパだけだからね」と教えていたのだ。

 

娘はそのときの約束を今も覚えているのだろう。実際のところ妻の話を聞くと、娘は友達に対しては乱暴な振る舞いをしたことが無いらしい。しっかりと約束を守り、乱暴を振るう相手はパパにだけに留めているのだ。

 

そして今ではアンパンマンだけでなく、私たちが見る『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』も大好きな娘。前よりも更に、正義の味方が悪者をやっつける、という構図の正当性を確信しているに違いない。

 

自分がまいた種とはいえ、今の娘の攻撃は強くなった。昨夜の私はその痛みに耐えきれなくなり、娘の身体を押さえつけるという強行手段に出た。すると娘はしばらく、うんうんと唸りながら、突然次のように叫んだ。

 

「そうだ、いいことかんがえたあ!」

 

私は何事かと思い、娘の拘束を解いた。すると、その隙に拳を水平に振るい、私の顔面にパンチを浴びせてきたのである。なんと今や娘は騙し討ちまで習得している。

 

パパにだけ。本来そんなことを言われればとても嬉しいはずなのだが、こればっかりは素直に喜べない。

 

ただ、娘が私との約束を守り、パパ以外には乱暴に振る舞わないよう、今後もしっかりと見守っていきたい。