いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ONとOFF

残業から帰ると、妻と娘がお風呂に入っていた。

 

洗面所で手を洗っていると、物音で私に気づいた娘が「あ、ぱぱ」「ぱぱだ」「ぱぱぁ!」と嬉しそうな声をあげる。

 

まずは夕食を済ませようと作り置きのおかずをレンジで暖めていたのだが、あまりにも娘が呼んでくれるので私も嬉しくなり、先にお風呂に入ることにした。

 

服を脱いで扉を開けると、娘は泡に包まれており、これからママに頭を洗ってもらうところだった。

 

私の姿を見ると興奮を露わにする娘。浴槽に浸かった私が彼女に顔を近づけると、嬉しさを表現するかのように、ペタペタと両手で私の顔を触ってきた。

 

私が「ただいま」と言うと、娘は最大級の笑顔になり、私の首に腕を回し、浴槽の縁越しにハグをしてくれた。

 

「パパにおかえり言った?」と妻が問うと、娘は一呼吸置いてから「おかえりよー」と、愉快に言ってきた。私も「ただいまよー」と、ただちに言い返す。

 

どんなに疲れて帰ってきても、娘に接するとたちまち疲れが溶けていく。さっきまで小難しい会話を同僚と交わしてきたのに、いつのまにか子ども向けの愉快な話し方に変わっている。

 

私のONからOFFへの切り替えボタンは、娘が押してくれているんだなぁ。昨日は暖かいお風呂に浸かりながら、そんなことを実感していた。

 

さて、今日もこれから仕事だ。出勤時は娘がまだ眠っているので、OFFからONの切り替えボタンは自分で押さなければならない。

 

帰ってきたらまた娘に押してもらうんだ。それを楽しみに・・・と。これはもはやONのボタンも娘に押してもらってるも同然ではないか。

 

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