いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

耳もとからミュージック

娘にヘッドフォンを教えてあげた。

 

前々からその存在は知っており、娘はよく首にかけては遊んでいたのだが、このたびスマホを繋げ、はじめて音を出してみたのだ。

 

ヘッドフォンを耳にはめ、彼女の好きな星野源を流してあげる。微かに聞こえるくらいのほんの小さな音でだ。彼女は音が流れ出すと、目をまん丸にしていた。

 

「おうた、きこえるよー!」

 

そのあとヘッドフォンを耳から外す。音が聞こえなくなった。また装着する。ふたたび音が流れ出した。娘は理解する。この黒いやつから音が出ているんだ!と。

 

娘はものすごい発見をしたかのように目を輝かせ、急いでリビングの妻へと報告しに行っていた。一緒に連れてきて、ヘッドフォンの仕組みを説明する。

 

「ほら、おうた、きこえるの!」

 

そのあとも彼女は夢中になってヘッドフォンをつけたり、はずしたりして遊んでいた。頃合いだと思い、なんど取り上げようとしても「おうた、きくー!」といって、娘はヘッドフォンを奪い返していくのであった。

 

大人サイズのヘッドフォンなので、娘がつけるとぶかぶかだ。長らく使っているやつなので、耳のクッション部分もボロボロに剥げかかっている。

 

買った時はなかなかいい値段がしたのだが、もうそろそろ潮時かもしれない。でも最後に、娘に小さな感動を与える役を担ってくれた。ほんとうにありがとう。

 

娘が自分で買うときには、もうおそらく有線のヘッドフォンなんてほとんど無いんだろうな。今後もテクノロジーの進化に、目をまん丸にさせられっぱなしだろう。