いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

落ちゆく葉っぱを眺めながら

木から葉っぱが落ちるのをただ眺めていた。

 

もちろん普段でもよく見かける光景だ。ただ、意識してそれだけを観察してみるというのは久しぶりだった。


場面は昼過ぎの緑地公園。昼食後に娘とふたりで遊びに来ていた。彼女は落ち葉が隙間なく敷かれた木々の根元で、どんぐり探しに夢中になっていた。私はその傍ら、ぼうっと宙を見つめ、落ち葉が地面へと向かうその様を、ただただ意味もなく眺めていた。

 

そのとき一陣の風が吹いた。頭の上では葉がざわめき、風が吹き去ると、ハラハラと十を超える数の葉っぱが落ちてきた。赤と黄の雨が降ってきたことで、娘も頭上を見上げた。それらを受け取ろうと両手を広げたその姿は、カレンダーにしたいと思うほど画になっていた。

 

娘は足元に積もった落ち葉を指さし、「これぜんぶ、うえからおちてきてるのかも!」と、たった今見つけた大発見を、興奮した様子で私に教えてくれた。「そうかもしれないね!」と、私も調子を合わせて笑った。

 

娘が集めたどんぐり達を渡され、私はそれを手の中でシャカシャカと振った。それらはとても軽快に、人工ではなかなかつくれないだろう、自然ならではの奥ゆかしい音を鳴らした。娘はそれを聞くと目を輝かせ、私に「しゃかしゃかしてぇ」とお願いを繰り返していた。

 

その後、ふたたび娘はどんぐり拾いを再開した。私はまた上を向き、ハラハラと落ちる葉を見つめながら、秋の空気を何度も深く吸い込んだ。葉が落ちる頻度は思いのほか早く、この調子だと、葉が全て落ちてしまう日もそう遠くはないのだろうなと思わされた。

 

ふと見ると、娘は大きな木の枝を持って笑っていた。その枝はトナカイの角のような姿形をしていた。私はそのとき、耳元で鈴の音が聞こえたような気になり、もうすぐそんな季節かぁと心の中で呟いた。もうすぐそんな季節かぁ。一年が過ぎ去るのは、本当に早いものである。