いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ベルトを締めて

毎朝、ズボンのベルトは娘が通してくれる。

 

出勤前のスーツに着替える時のことだ。私は着替える一式を持って暖かいリビングへと移動する。その服の山をソファに置くと、娘は中からベルトだけを引っ張りだし、これは自分がやってあげるんだと、握りしめる。

 

その後娘はそのベルトを抱きかかえたまま、私の着替えに指示を与えてくる。まずそれを着て、次はそれだよ、といった具合に。下着とシャツを着てズボンを履いたら、ついに娘の出番がやってくる。

 

私は膝をついて立つ。すると娘が私の身体にベルトを巻きやすい高さになる。娘はベルトの先をベルトループに順番に通していく。大好きな輪っか通しの要領だ。

 

ぐるりと身体の周りを一周し、前まで戻ってくると、バックル部分は私がサポートしピンを穴に通す。最後にベルトに付いたループに先端を通して完了だ。終わると娘は満足げにポンポンと叩く。そして笑顔で言うのだ。

 

「ぱぱ、おしごと、がんばってね」

 

おかげで毎朝、ベルトを締めると、心が引き締まる。