いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

やらせ

娘はよく『やらせ』をする。

 

代表作としては褒められ高を上げさせるための『やらせ』がある。昨夜も洗面所でそんな場面があった。娘にうがいをするように言うと、こんなふうに頼んできた。

 

「“そんなのできないんじゃない?”っていって」

 

私が台詞を言うと、娘は「できるよ!」と答え、得意げにうがいをやってみせた。私は彼女が求めるがままに大げさに褒めてあげた。期待値を一度下げさせて、それを悠々と越えてみせる。さぞかし気持ちよかろう。

 

他にも、叱るための『やらせ』もある。食事をしながら、娘は私に向かってこんなことを言うのであった。

 

「ぱぱ、“うまい”っていって」
「うまい」
「ぱぱ!うまいじゃなくて、おいしいでしょ!」

 

本気で怒ってくるのだ。会話だけ聞くとサイコパスだろう。私がつい言ってしまう「うまい」を注意するのが好きな娘。ただ私が気をつけてなかなか使わないでいると、このような『やらせ』を仕掛けてくるのであった。

 

究極の『やらせ』はじゃんけんだ。娘が繰り出す手順をだいたい把握している私は、ここぞの勝負(チャンネル争い等)ではほぼほぼ勝つことができる。困った娘は、最終手段として『やらせ』を頼んでくるのであった。

 

「ぱぱ、ちょきだして、○○ちゃんぐーだすから」

 

言われるがままにすると、娘はいっぱしの勝ち顔をする。そして悠然と勝者の特権を奪っていくのであった。

 

ボケでやっているようで、本人はどれも真剣なのだろう。可愛いなあと思いつつも、社会に出たらそんなに甘いもんじゃないぞ、とも親心に思うのであった。