いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

つまびらかに表情を

娘が口をすぼめている。

 

上唇が羽ばたくカモメのように見えた。その下には白い歯がのぞき、手元の作業によってそれが見え隠れする。

 

娘は食卓に座ってお絵描きをしていた。妻はキッチンでホットケーキを焼いてくれている。私は娘の正面に座り、彼女の表情をつぶさに観察してみることにした。

 

改めて意識して見てみると子供の表情というのは面白い。今は真剣な表情でペンを掴み画用紙と相対している。線や丸を描くたび、口をすぼめたり、開いたり。

 

それにしても随分と絵も上手くなったものだ。自分とパパとママを描いてくれたのだが、それぞれに色を使い分け(パパが青、ママが橙、娘が赤)、大きな丸の中にふたつの目と口を描き、輪郭には髪と耳を添えている。

 

教育テレビに投稿されている似顔絵レベルにはなってきた。同い年の子と比べて娘が上手いのかはわからないが、我が子のものなのでもはや作品と呼びたくなる。

 

描き終えた娘は「じゃじゃ〜ん!」と得意げだ。小動物のように前歯がのぞき、涙袋がぷっくりと膨らむ。瞳はキラキラ輝いて、見ている私まで嬉しくなるのだった。