いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

かたや主人公

お勤めを終え、帰宅する。

 

繁忙期が過ぎ去りまた頻度の減った出社日。たまにしかないので『お勤め感』が増す。参勤交代に向かう大名たちはこんな気持ちだったのかもしれない。

 

家では家族が笑顔で迎えてくれる。娘は早かったね、と喜びさっそく遊ぼうとせがんでくる。息子は顔を覗き込むとニッコリと笑い、キャハッと声を出して手をバタつかせる。妻が夕食の支度をする間、3人でおままごとをして過ごした。

 

息子のハイハイ移動が上達したことで、家の勢力図にも変化が訪れつつある。これまでの“可愛い置き物”扱いはもはや通用せず、もっとも目を惹きつける存在になった。しばし娘の独壇場であった家族の中心に、割って入るだけのタレント性を備えている。

 

ソファを用いたつかまり立ちからの筋トレ、部屋をひとり抜け出しての廊下での独走、なにかを点検するかのように壁を叩いて周ったり、カーペットに頭を押し付けでんぐり返し未遂をしたり。どの行動も見ていてまったく飽きがこないのだった。

 

しかも目には純粋な光を宿し、自らの好奇心に従いまっすぐに行動するその姿からは、ほとばしる『主人公感』を感じさせられた。子供は無敵だなあ。

 

自分の思うままに、伸び伸びと挑戦する姿は見ていて清々しい。参勤交代に嫌々赴く父親とは大違いだな。そんなことを思い、少しだけ虚しくなった。