いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ナイトメア

離婚した妻が私の友人と再婚していた。

 

私はそれを知らずにその友人宅まで遊びに行った。食卓へと通され椅子に座ると、妻が麦茶の入ったコップをお盆に乗せ、私たちの元へと運んできてくれた。

 

私は戸惑いが顔に出ぬよう、なんとか平静を装った。その後、妻は斜め向かいに座り、私と友人との会話を笑顔で聞いていた。あらかじめ私が来ることを知っていたからだろうか、妻はとても落ち着いているように見えた。

 

私はできるだけ妻の顔を見ないよう努めながら、友人と話を続けた。しかしその内容はまったく頭に入ってこなかった。あまりに妻の方を見ようとしないため、さぞ不自然に見えていただろう。ついに、私はその場の空気に堪えきれなくなり、話すのをやめ黙ってしまった。

 

私はうつむき床を見つめていると、涙がこみ上げてくるのを感じた。どうしてこんなことになってしまったんだ。なぜ妻が他の奴と一緒にいるんだ。私は我慢できずに席を立ち、涙を流しながら妻にしがみついていた。


「こんなの嫌だ!」そこで目が覚めた。

 

リビングに敷いたマットレスの上。エアコンは切れており、部屋の中には生ぬるい空気が充満していた。

 

テレビにはBlu-rayのメニュー画面が映っている。映画を流しながら眠ってしまったようだ。私は首元の嫌な汗を手で拭い、立ち上がってエアコンを入れた。

 

クーラーを切っていたせいであんな夢を見たとも言えるし、暑苦しかったおかげで早く目が覚めたとも言える。私は冷蔵庫からお茶を出し、それを一気に飲み干した。

 

妻と娘が実家に帰ってから12日が経った。少なくともこんな夢を見てしまうくらいには、精神的に弱ってきているらしい。そういえば最近、食欲も湧いてこない。

 

でもあと5日。次の週末は家族みんなで過ごせるのだ。楽しい夏休みに向けた、最後の試練と心得よう。