娘はお姫様だっこが好きみたいだ。
仕事終わりに娘と遊んでいたとき、そのことが発覚した。様々な形で娘を搬送する遊びをしている中で、お姫様だっこをした際「これ、だいすきなんだあ」と、うっとりとした声をもらしたからだ。
3歳児までもが大好きなお姫様だっこ、恐るべしである。その後、私たちは遊び場をベランダへと移し、夕方の心地よい風を浴びながら、『捕まえごっこ』という、掴まえ手の私から娘が逃げる遊びをはじめた。
娘はベランダに敷き詰めた芝生の上で、私の手をギリギリでかいくぐりながら駆け回る。家の中ではできない、なかなかいい運動なのである。
しばらくすると、妻から夕食の準備ができたとの声がかかった。私は娘に引き上げようと言う。しかし娘は楽しかったのか、もっと遊びたいとその場に座り込んだ。
私は説得を続けたが、拗ねている娘はなかなか腰を上げてくれない。そろそろ叱ってでも連れて行こうか、そう思い始めていた頃、娘の方から打診があった。
「じゃあ、あの、こうやってだっこするやつ」
そんなわけで私は娘をお姫様だっこでベランダから連れ帰した。腕の中の娘は、やはりうっとりとしていた。