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文学パパが綴るかけがえのない日常

室町無頼

垣根涼介の『室町無頼』を読了した。
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筆者による歴史小説の2作目だ。第1作『光秀の定理』に続き、先日文庫化されたので読んでみた。

 

室町時代という、あまりピンとこない時代を舞台に書かれているのだが、前評判通りとても面白い小説だった。この作者の特徴でもある、男心掴まれる魅力的な人物が多数登場し、最後まで一気読みをしてしまった。

 

この時代で最も有名な出来事は『応仁の乱』だろう。ただこの作品では、そのことについて直接は書かれていない。後にその歴史的大事件へと繋がるきっかけを作った土一揆、それについて書かれている小説なのだ。

 

主要人物である蓮田兵衛、骨皮道賢らは、史実にも記されている人物らしいが、彼らを知る人は少ないだろう。私も知らなかった。それでも、描かれ方が魅力的なので、どんどんと彼らのことが好きになってしまう。

 

少ない資料から想像を膨らませ作者が作り上げた人物像なのだろうが、このように志の高い男達が行動を起こし、後の戦国時代へとこの国を動かす礎を作ったと思うと、なんだかそこにはロマンを感じてしまう。

 

ちなみに、本作と併せて筆者インタビュー記事も読んだのだが、垣根はデビュー当時からゆくゆくは歴史小説を書こうという計画を持っていたらしい。

 

現代小説に行き詰まり転身を図った、と私は勝手に思い込んでいたので、少し申し訳ない気持ちになった。

 

なんでも歴史小説を書くのは史実の把握等に時間がかかる為、専業作家になるまで我慢していたそうだ。『ワイルド・ソウル』や『君たちに明日はない』等でヒットを飛ばし、現在は本来書きたかったものを思う存分に書けているのだろう。この作者のことがより好きになった。

 

彼の歴史小説3作目は『信長の原理』だ。先日の本屋大賞では候補に挙がったものの惜しくも受賞を逃したが、また文庫化された際には読んでみたいと思っている。

 

この作者に限らず、歴史小説は性に合いそうなので、また気になる作品があれば読んでみよう。学生の頃から、こんな風に歴史に興味を持てたらよかったのにな。