いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

まっくろくろすけ

・・・ぱちんっ。

 

「とったぁ~!」

 

両手を合わせた娘が、ドタドタと駆けてくる。

 

「おねぇちゃ~ん!」

 

娘はまだ一人っ子なので姉妹はいない。これは映画トトロにおけるワンシーンの再現なのだ。途中で「ぱぱぁ~!」ともアドリブで付け加える。

f:id:pto6:20181028085954j:image

ソファまでやって来た娘は、私が広げた腕の中へと飛び込んだ。合わせた両手を広げてみせると、そこには小さなおもちゃが入っていた。

 

「こえ、まっくおくおすけ、とった!」

 

瞳をらんらんとさせる娘。私が「ほんとだ、まっくろくろすけ、とったねぇ」と調子を合わせると、むふぅ~という風に笑った。

 

すると再び娘はテレビの方を指さし、該当のシーンまで巻き戻すよう私に指示をだす。私はリモコンをとり、これで何度目かになるその作業を行うと、メイが家の2階にてまっくろくろすけと対峙するシーンが再生される。

 

それを一瞥すると、娘は再びリビングから一番遠く離れた洋室まで走って行ってしまう。彼女の中ではそこが“2階”という設定なのだろう。新しいマンションでは、廊下が前よりも1部屋分長くなった。

 

その部屋での娘の様子は見えないのだが、おそらく今頃は両手を広げ、ふわふわと降りてくるマックロクロスケを想像しながら、そのタイミングを見計らっていることだろう。

 

そろそろしたらまた音が響き、一連の行動が繰り返される。はたして今回は何度目でこのループが終わるのだろうか。そう思いながらも、見ている私たちはみんな笑顔を浮かべていた。

 

・・・ぱちんっ。