いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

鼻からでた異物

「はなくしょ、とれたよー!」

 

お風呂のインターホンに向かって娘が声を上げる。向こう側の相手はリビングの妻だ。娘は嬉しそうに、そしてどこか誇らしげにそのことを報告していた。

 

娘は鼻からでる異物を『はなくしょ』と認識している。固体であろうが、液体であろうが、ゼリー状であろうが、全てそのように呼ぶのだ。

 

確かに通話を開始する少し前、娘は自ら「ふんっ」と鼻をかみ、どろっとした鼻水を出した。私はそれを指で拭い、お湯で流した。そして「きれいになったねぇ」と、浴槽の中で娘の頭を撫でたのだった。

 

きっと娘はそのことをママにも伝え、褒めてほしかったのだろう。操作パネルの『通話』ボタンを押し、ママに嬉々として報告をしていた。

 

その行為自体はとても可愛らしいことだ。ただ、いきなり『はなくそ』という単語を耳にしたので、私は少しだけギョッとしてしまった。しかもこんなに可愛い女の子(親バカ)の口からその言葉が飛び出したから尚更だ。

 

もちろん親としては、そのギャップすらも可愛いく思う。ただ、それを第三者が聞いたときに同じようにギョッとされたら、娘の心象が悪くなってしまうのではないか、そんな懸念が頭に浮かんだ。

 

また、もう少し彼女が成長した時に、まだ恥ずかしげもなくそんな言葉を口にしていたら恥をかくことは目に見えている。不名誉なことに『下品な女の子』というレッテルを貼られてしまうかもしれない。

 

私は彼女に『鼻くそ』という言葉を教えてしまったことを少し後悔した。もっとお上品な言葉を教えるか、もしくは恥ずかしそうに言うよう口添えをすべきだったかもしれないな、と。

 

でも、『鼻くそ』の上品な呼び方ってなんだろう?

 

そんなわけで、私はお風呂をあがってから『鼻くそ』について調べてみた。すると同じような悩みをもつ方も多いらしく「鼻くそ 上品な言い方」で検索すると、多くのページがヒットした。

 

鼻かす、鼻垢、はなだまり・・・。いろいろと呼び方はあるみたいだが、それでも『鼻くそ』というのが正式名称らしい。なんだ、それでいいのか。私は少しだけ罪悪感を払拭することができた。

 

でも、娘にはあまり堂々とは口にして欲しくないな。あんな清らかな口(親バカ)には不釣り合いだ。まぁ、年頃になれば自ら控えるようになるのだろうけど・・。