いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

カウントダウン

「3、2、1、ゼロー!」

 

娘が思いきり息を吹くと、水ぶえの先から小さな水柱があがった。娘は目を輝かせ「でたっ!」と言う。とても嬉しそうだ。

 

お風呂場での一幕である。最近娘は、マクドナルドでもらった『ジョージの水ぶえ』でばかり遊んでいる。本来の遊び方とは異なるが、笛に水を入れ、それを噴き出すのが楽しいようだ。

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娘にせがまれ、今度は私が笛を吹く。娘は私の真似をして、カウントダウンをやろうとする。指を立て、それを私の前に掲げる。

 

「2、3、4・・」

 

しかし娘はまだ数字を覚えたてなので、昇順でしか言えない。折っている指もでたらめである。娘はカウントを続けながらも「なんか、ぱぱのとちがうな」と思っているようで、その声は徐々に自信をなくしていく。

 

「・・5・・はい!」

 

結局はそのように、強引な吹き出しの合図を出した。私は笑いそうになりながらも、思いっきり息を吹き出す。水ぶえからは勢いよく水が飛び出し、娘の頭上を越える高い水柱が立った。

 

キャッキャと喜ぶ娘。「でた、でた~」と言いながら手を叩き笑っている。娘はふたたび笛を手に取り、自分の番だと主張する。私がそれをしばし見守っていると、焦れたように振り返り、私に言うのであった。

 

「ぱぱ、2、3、4、5、して!」

 

カウントダウンのことだろう。そこでも昇順だ。私は愉快な気持ちになりながらカウントダウンをはじめた。

 

そんなふうに、昨日のお風呂場では、昇順と降順が入り乱れるヘンテコなカウントが何度も繰り返された。

 

どうやったって数字が増えていってしまう娘のカウントを聞きながら、まるで彼女の好奇心みたいだな、と思った。何かを見て、聞いて、覚えるたびに、彼女はそれに興味を持ち夢中になる。

 

しばらくは、こんなふうに興味関心が右肩上がりに増えていくばかりなのだろう。力強く、確実に昇っていく娘のカウントに、なんだか頼もしさを感じた。