いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

秘めた我慢

昨夜のお風呂でのことだ。

 

「ぱぱのおなかには、あかちゃんいない?」

 

出し抜けに娘が訊いてきた。心配げな表情を浮かべ、まっすぐに私を見つめている。指はもじもじと動き、なんだか言いづらいことを抱えている様子だった。

 

「うん、いないよ。それはママだけ」

「じゃあ、おなかをぎゅって、だっこしてもいい?」

「もちろんいいよ」

 

娘はそれを聞くと、華やぐ笑顔を見せて私の腹に抱きついてきた。私は彼女の頭を優しく撫でる。どうやら、娘にはいろいろと、我慢をさせてしまっているようだ。

 

娘も娘なりに、妻を気遣ってくれているのだろう。私は娘のつむじに鼻を押し当て、思いっきり息を吸い込んだ。娘の甘く優しい匂いが、鼻孔いっぱいに広がった。

 

ちなみに娘はその後、容赦ないヒップドロップを3度私の腹に喰らわせた。ぐふっ。でも、なんのこれしき。