いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

考えごと

バックハグの体勢で娘と湯船に浸かっていると、出し抜けに、娘がしばらく黙り込んだ。

 

「どうしたの?」。私は不安になり娘に声をかける。娘は少しの間を置いて、振り返り言う。

 

「ううん、かんがえごとしてたの」

 

か、か、か、考えごと!?私は娘が初めて口にしたその言葉に、ただただ驚いてしまった。

 

「ほら、パパとか、ママみたいに」

「い、いきなり、どうしたの?」

「◯◯ちゃん、もうおとなだから」

 

その澄ました笑みを見て、やっと合点がいった。最近、娘は立派なお姉さんになろうと張り切っている。事あるごとにお利口さんをアピールし、そのたび大人びた笑顔を作るのだった。

 

そっか、娘は私たちが『考え事をしていること』さえも『大人の印』だと捉えているんだな。着眼点がなんだか新鮮で面白かった。

 

その後も、娘はたびたび押し黙り「またかんがえごとしてたの」とおどけていた。「何を考えてたの?」と尋ねてみると、一丁前に「うふ、ひみつ」と含みを持たせた笑みを浮かべた。

 

でも、娘もそのうちもっと自我が目覚めてくると、本当に考えごとをするようになるのだろう。そう思うと、既に大人に向けた準備は始まっているのかもしれない、そう思った。

 

成長しているなあ。そう嬉しく思うのと同時に、『考えごとをしなくてもいい、残り少ない貴重な期間』を、めいいっぱい楽しんで欲しいなと思った。まだ、こっちに来るのは早いよ。