いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

バイキンマンのグミ

残業から家に帰ると、娘が玄関に駆けてきた。

 

おかえりーと言いながらも顔がウキウキとしている。そして「きて、きて」と手を振りながら、私をダイニングの方へと誘導する。

 

なんだろう、と思って娘についていくと、テーブルに綺麗に折られたティッシュがあり、その上に緑色のグミが置かれていた。

 

「ほら、ばいきんまん、ぱぱの!」

 

娘はわくわくした表情で言った。私はすぐに前日のやりとりを思い出し、娘の意図することに思い当たった。

 

前日、娘はアンパンマングミを食べていた。その途中、ドキンちゃんのグミが出た。すると娘はそれをママにプレゼントしたのだ。羨ましくなった私は自分も欲しがってみたのだが、娘に諭すように言われてしまった。

 

「ぱぱは、ばいきんまんっしょー」

 

残念ながら、そのとき既に小袋の中にバイキンマンは残されていなかった。娘は最後のアンパンマンをこれ見よがしに取り出し、美味しそうに口に含んだ。

 

そんなやりとりがあった翌日の昨日。同じおやつを食べていた娘は、途中でバイキンマンがでてきたのだろう、帰ってくる私の為にわざわざとっておいてくれたのだ。

 

嬉しい気持ちが胸に広がった。娘にお礼を言い、急いで鞄を置き、手洗いうがいを済ませた。娘はその間、私についてくる。手には例のグミが持たれていた。

 

食べる準備ができたので、「ありがとう、ちょうだい」とお願いした。しかし娘はもったいぶるそぶりを見せ、含みのある笑顔で「だめぇ~」と言った。ただただその瞬間を引き延ばそうと楽しんでいるだけだ。

 

私はリビングへと移動し、再度娘にお願いした。すると娘はハニカミながら「はい、どーぞ」と渡してくれた。そしてママに呼びかけ「ほら、ほら」と、パパにプレゼントした功績を褒めてとばかりにアピールしていた。

 

グミはいつものグミだった。

でもいつも以上に美味しく感じられた。

 

妻は自分の助言のおかげだと示唆してきた。実際そうなのであろう。それでも、私は娘の気持ちが嬉しかった。

 

思えば以前、こんなことを書いた。

pto6.hatenablog.com

あのときは自分が『バイキンマン担当』であることに、幾ばくかの悲しさを感じていたものだ。でもこんなに素敵なことがあるなら、それも悪くないなと思った。

 

これからも、娘のためにバイキンマンを全うしよう。

 

はっひふっへほ~。