いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

公園欲の発散

娘が口をへの字に曲げ、足場の上で鼻息を荒げている。

 

「ぱぱは、そこでみてて!」

 

わかったわかった、と私は言い、それじゃあ乗せるところだけね、と娘に歩み寄る。太いロープを引き寄せ、それを娘に掴ませる。ロープの先端にある団子結びの箇所に娘を座らせ、太股でしっかりとロープを挟ませる。

 

「手も足も離しちゃだめだよ」

 

娘はこくんと頷いた。顔は真剣そのもので、少しだけ不安を感じているようにも見えた。私は支えていた手を静かに離した。ゆっくりとロープが進んでいく。私は娘が落下した場合にそなえ、その後を追いかけていった。

 

顔を強張らせ娘は懸命にロープを掴んでいた。足も閉じられ思いのほか安定している。ロープは徐々にスピードを上げていったが、結局終点まで娘はひとりで乗り切ることができた。手を添えてロープから降ろしてあげる。

 

「ターザンロープ、ひとりでできたね!」

 

初めてのことだった。私がそう言い頭を撫でると、娘の両目が大きく開いた。「もういっかいやる!」そう叫ぶと、娘は再びスタート地点へと駆けていった。

 

ここのところ、雨や寒さやコロナのせいで、なかなか外出ができていなかった。昨日の娘は、溜まりに溜まった『公園欲』を、一気に解消しているかのようだった。

 

元気いっぱいに遊ぶ娘を見て、私も妻も目を細めた。外は楽しいよね。もっと外で遊びたいよね。同じような感情を、いま日本中の家族が抱いているのだろう。