いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ちょっとだけ

娘とふたりで寝るときの恒例がある。

 

「ちょっとだけあそぼ?」と娘に言われることだ。彼女はそのとき親指と人差し指で『C』のマークを作り、「ね、こんくらいだけから」と言って指同士をすれすれに近づけ、“ちょっとだけ”具合をアピールしてくる。

 

その様が実に愛らしい。一体どこでそんな仕草を覚えたのだろうか。私は愉快になりながらも「じゃあこんくらいね」と言って、自分の指を添えて彼女の指の隙間を更に狭ませていった。はたして1mmあたりがどれほどの時間なのかはわからないけれど。

 

すると、勢いあまって娘の両指がくっついてしまった。私は言う「ああ、もう“ちょっと”がお終いになっちゃったね」と。娘はケタケタと笑う。そして抵抗して指の隙間を復活させようとしてくる。私はふたたび指に力を入れ、“ちょっと”を消滅させる。「残念、またお終いだ」

 

そんなことを何度も繰り返し、娘と一緒にきゃっきゃと笑い合っていた。娘は寝る前の遊び時間をなんとか確保しようと、指の間隔を広げるのに躍起になっていた。

 

結局はそんな“遊び”をしている間に、ふたり寝る時間となった。週末は“ちょっと”と言わず、たくさん遊ぼう。