いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

お腹の中にいた頃

さみしかったんだよ、と娘が言った。


就寝前のおしゃべりタイム、妻のお腹の中にいる赤ちゃんの話をしていたときのことだ。娘は自分もママのお腹の中にいたんだよ、と少し前に妻から教えてもらった事実を、得意げに私に話してくれていた。


自分もお腹の中にいて、赤ちゃんだったんだけど、ごはんをたべて大きくなって、今ではお姉ちゃんになったの。と、娘は尚も得意げに私に教えてくれた。


私はそうかそうかと相槌を打ちながら、そういえば君がお腹の中にいる頃はよくママのお腹を蹴ってたらしいよ、と教えてあげた。それを聞くと娘は「え、こうやって?」と布団に寝ころんだまま蹴る仕草をしてみせた。


すると娘は少し考えるような表情をし、しばしの沈黙が流れた。そしてその後、冒頭の台詞を口にした。「おなかのなか、ひとりぼっちで、さみしかったんだよ」と。


私はその主張に思わず笑ってしまった。それでも娘は相変わらずしおらしい感じで、みんなに会いたかったから、と言葉を続けていた。早く外に出してという想いで、娘は妻のお腹を蹴り続けていたらしい。


自分がお腹にいたころを想像して、どんな感情で蹴っていたのかを推察し、娘なりの答えを導いたのだろう。素敵な感性だ。将来、国語の現代文が得意になるかもな。