いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

雨がきこえる

お外から雨の音がきこえてくる。

 

ザーザーとうるさくって、なかなか寝られない。音が大きくなるたびにドキドキしてしまう。だって雨がいっぱいふると、ママのケータイからこわい音が鳴るからだ。

 

早くお外であそびたいなあ。ふと、となりのママがもぞもぞと動くのが感じられた。見ると、ママはお腹をさすっている。あの中には、赤ちゃんが入っているのだ。

 

さいきんママのお腹はどんどん大きくなっている。パパとはなれてばあばのお家に来てからは、もっと大きくなった気がする。パパのいるお家には、赤ちゃんがうまれてから帰るらしい。早くうまれてくればいいのになあ。

 

ママはまだお腹をさすっている。赤ちゃんがママのお腹に来てからはずっとそうだ。お腹がいたいから、ぎゅっとするのもダメだといわれている。せめてお手てをつなぎたいんだけれど、お腹をさすってたらそれもムリだ。

 

「どうして赤ちゃんをさわってるの?」

 

思わずママにきいてしまった。はやく寝なさいと怒られるかもと思ったが、ママは優しい声でこたえてくれた。

 

「元気だなあと思って。触っちゃ、ダメ?」
「・・うん。○○ちゃんを、ギュっとしてほしいの」

 

おもわず素直にそう言ってしまった。ほんとうはもうオネエチャンだから、がまんしなくちゃいけないのに。ママは、赤ちゃんを大事にしなくちゃいけないのに・・。

 

それでも、ママはギュっと抱きしめてくれた。

 

やわらかくて、あったかくて、大好きなママのいいにおい。ああ、いつまでもこうしていたいなあ。そっと目をつむると、まっくらの中にすいこまれていくように感じた。いまではもう、雨の音はすっかりきこえてこない。

 

***

 

妻が共有してくれた娘との会話文をもとに、妄想で書いてみた。その場にいられなかったのは残念だったが、ゆえに、そのときの情景を自由に想像することができた。

 

可愛くてお利口な我が娘は、きっとこんなことを思い、あのようなセリフを口にしたのだろう。嗚呼、早く会いに行って、思いっきり彼女を抱きしめてあげたい。