「なんでママ、まくすしてるの?」
娘はマスクのことを”マクス"と呼ぶ。そのたび私たちが訂正を加えているのだが、なかなか覚えてくれない。
ただ、愛嬌のある娘のその言い間違いに、昨日は思わずほっこりとした気持ちにさせられた。
減りゆく手持ちに気を病ませる悩みの種でもあり、直近ではアイロニカルな風刺の対象ともなっているマスクだが、娘のおかげで急に愛らしいものに感じられた。
その後も、娘はマクス、マクスと言い間違えたままお喋りを続けていた。妻もマスク越しに微笑んでいるようだった。マスクをつけて外出しなければならない不安に満ちたこの状況を、しばしの間忘れることができた。
まだ心の底から笑うことはできないが、いつか“笑い話”として話せる日がくればいいな。そう願っている。