いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

同期からのSOS

同期から受けた電話に思いを馳せる。

 

彼はこの8月に私と同じ部門に着任した。それ以前でも互いに知っており、会えば話をする間柄だった。ただ、言ってみればそれ以上でも以下でもなく、友人と言えるほどではなかった。

 

しかし8月からは日々顔を合わすので会話が増えた。もともと性格の相性もいいので、徐々に親交が深まっていく感覚があった。お互い本社中枢の部署に配属されたという意識もあると思う。いわば同期内におけるライバルの筆頭なのだ。

 

けれど、私としては切磋琢磨をする意味での意識であった。彼の方もそうだろう。多忙な部門において、お互いに刺激を与え合いながら、日々高め合っていく関係でありたいと思っている。

 

そんな彼から愚痴を言いたいと電話があった。

 

彼の仕事が忙しい局面にあることは相談を受けており、私もフォロー役を頼まれ、提言や協力を行なっていた。しかし彼は持ち前の明るさと要領の良さを発揮し、飄々と業務をこなしているように私の目には映っていた。

 

しかし、電話口に出ると、彼からは溜まりに溜まった弱音が次々と吐露された。私からは見えていなかった、彼の所属担当が抱える問題点も明かされ、想像以上に彼が苦しい立場でもがいていることを伝えられた。

 

彼は「間違いなく近いうちに転職する」とまで言い放っており、客観的に見ても状況の改善は困難に思えた。彼は着任以降、帰宅のたびに塞ぎ込む気持ちを抱いていたようだ。そんな感情を抱くのは、入社以来はじめてのことらしい。

 

彼の性格や能力を考えると、とても意外に思えたが、話を聞く限りでは自分でもそうなるだろうと想像ができた。となりの担当なのに、うちとは大違いだ。何事もチームとして取り組む風土のある我が担当とは違い、彼の担当ではそれぞれが独立した体制で業務が行われている。

 

彼の悩みに共感し、励ます言葉をかけ、協力することも改めて伝えた。しかしそれにも限界がある。やはり直属の上司にしっかりと相談し、抜本的な問題解決を図るしかないだろう。

 

彼は最後にお礼を口にし、電話をきった。愚痴を聞いてくれただけで有り難いと言ってくれたが、私にできることはそれくらいしかない。

 

次の日、彼から上司に相談したよと連絡がきた。これで状況が少しでも改善してくれることを願っている。もちろん健康が第一なのだけど、できれば今後も彼と一緒に仕事がしたい。