いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

小さな恋人

「わたしがあっちむいても、こっちみててね」

 

ベッドの上で娘が言う。私が指示に従わないと、もう、といって身体の上にのしかかってくる。見ててって言ってたでしょ、と叱られるのだ。私だって寝返りくらいは自由にうたせて欲しいのだけれど。

 

他にも腕はこうぎゅっとさせてて、だの、ここに手を置かせて、だの要求は多い。そんなことよりも早く寝なさい、と口では叱るものの、女の子特有のその甘え方に、ときめきの萌芽を感じるのであった。

 

子供でもやはり異性は異性。甘えられると、小さい恋人ができたような、嬉しい感情を抱くこともたまにはあるのだ。きっと妻も息子がもう少し大きくなれば、同じような感情を抱くのではないだろうか。

 

また娘の甘え方が、なんだか恋人時代の妻にも似ていて、やっぱり親子なんだなあと実感していた。そんな懐かしい感情にも包まれながら、娘が寝入るまで静かに同じ方のほっぺを布団に押し付けていた。