いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ドライブ・マイ・カー

昨夜、妻と一緒に鑑賞した。

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冒頭からまったく無駄なシーンが無く惹き込まれる。序盤が終わり、オープニングが流れる頃には、これは信頼が寄せられる映画だと確信が得られていた。

 

とにかくどのカメラアングルもカッコ良いのだ。自分が住み慣れた日本の風景なのに、その美しさに息を飲むことも多々あった。道路の上をただただ車が進んでいくだけの映像に、何度ため息を漏らしたことか。

 

そして脚本の素晴らしさ。村上春樹ファンの私は当然ながら原作は読んでいる。短編集としては一番好きな作品なので繰り返し読んだ。ゆえに、脚本家が原作へのリスペクトを持ちつつも、いかに巧みに長編映画の物語へと作り変えたのかがわかり、そこにも深い感動を覚えた。

 

表題作以外の収録作の要素も組み込み、キーワードだけが登場していた劇中劇を膨らませ物語の中心に据え、監督自身の拘りの演出方法さえも物語に有効的に活用する。それでいて村上春樹の原作の世界観を決して崩していない。なんという神業か。

 

すべてのセリフや意味合いが多重にも重なり合い、見事にリンクし、必然性を持って結末へと収斂していく。しかもそれらはまったく説明じみていない。観客があるがままに感じられるよう、委ねられている。これ以上ないほどに芸術性に溢れた仕上げ方なのだ。

 

3時間あまりの長い作品だが、飽きずに見通すことができる。終盤からはいっそう目が離せなくなり、最後には深い感動に包まれる。観終わった直後、これは自分たちの人生を通してみても上位にリストアップされる映画だということを、妻とは語り合った。

 

妻と私は必ずしも映画の趣味は合わないのだが、そんなふたりが口を揃えて絶賛したことにも、この映画の凄さを感じさせられた。もちろん好みでない人もいるのだろうが、それでも多くの人が作品としての凄さは感じられる仕上がりではないかと思う。

 

アダルトな描写も多いので、子供たちの前では堂々と観られないのだが、それでも今後何度も見返したいねと妻と話した。映像特典にある撮影の裏側も知りたいことだし、コレクターズエディションの購入を前向きに検討している。

 

私が大好きな村上春樹と、妻が大好きな西島秀俊が交わる作品が、こんなにも一級品だったことに喜びを感じた。しかもそれが世界的にも評価され、本国のアカデミー賞まで受賞したのだ。なんだか日本人としてとても誇らしい気持ちになった。

 

こんなことなら劇場で観れば良かったね。妻と話していた。あろうことか、プライムで無料配信されるまで待ってしまった。せめてディスクを買って誠意を払わなければ。それほどまでに深い余韻に包まれている。