いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

文章のみがき方

辰野和夫著の『文章のみがき方』を読了した。以前書いた『文章の書き方』の姉妹本だ。

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前作に引き続き、とても読みやすく、おもしろく、大変学べる要素が多かった。

 

メッセージとしては、前作と同じものも多数あるのだが、それらがまた別の言葉で、別の例文とともに解説されている為、更に理解を深めることができた。

 

もっと言えば、『文章の書き方』と『文章のみがき方』の間は13年以上もあいているため、辰野さんの文章自体が更に磨かれているように思えた。本の中でも書かれているように、きっと毎日の鍛錬を重ねられた結果なのだろう。

 

本書は4章で構成されている。『①基本的なことを、いくつか』、『②さあ、書こう』、『③推敲する』、『④文章修行のために』である。それぞれの章について、私が特に印象に残ったことを書いていく。

 

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①基本的なことを、いくつか

 

冒頭にある『毎日書く』という項目が印象に残った。「日々、たゆまずに書く」ことで自分の文章が形をなしてゆく、と書かれている。また「日記は野球でいう素振り」だ、とも。

 

私も現在、毎日このように文章を書くようになって、書き続けることの効用を少しずつ実感している。

 

以前は、多くても週に一回のペースで、まとまった文章を書いていた。しかしその頃は、期間があけばあくほど、書く時にぎこちなさを感じたものだ。

 

しかし、今のように毎日書いていると、日々によりアウトプットの出来・不出来はもちろんあるものの、書くことに対するぎこちなさは感じなくなっている。

 

昔ギターをやっていた頃、数日空けると指が思うように動かない、ということがあったが、文章でも同じことが言えるのであろう。

 


②さあ、書こう

 

この章では最後の『抑える』の項目が印象に残った。表現を「抑えることによって文章の力は失せるのではなく、かえって力が加わる」と書かれている。

 

この項目を読み、自分がこれまでその点を特に意識してこなかったことに反省をした。

 

自分の味わった感動を伝えたいが為に、感情のたかぶりのまま、少しおおげさな表現をつかって文章を書いてしまう。そのようなことは、恥ずかしながら私にも身に覚えがある。

 

しかしながら、そういう時にこそ抑制をもって、簡潔に淡々と書いてみる。そのすることで、かえって想いの深さが読み手に伝わることがある、と著者は書いているのだ。

 

きっとシンプルに書くことで、行間に読む人の想像が入り込む余地が生まれるのだろう。この項目を読んで以来、私は常にそのことを頭において書こうと試みている。

 


③推敲する

 

この章では『比喩の工夫をする』という項目がよかった。「いい比喩は文章にいきいきとしたツヤを与える」と書かれており、それを裏付けるように秀逸な実例が紹介されている。

 

私も文章を読むにおいて、優れた比喩に出会うことは喜びのひとつだ。ぐっとくるものに出会えるたびに、書き記すようにもしている。

 

もちろん自分が書く上でも、常に効果的で印象に残る比喩を使いたい、という思いは持っている。しかし、そう易々とはいかないのが、この比喩というものの奥深さであろう。

 

本書には「だれかが使った比喩をそのまままねしてはいけない。(中略)自分独自の言葉を使うことに意をそそぎたい。」と書かれている。

 

これからも、多くの良い比喩に出会い刺激をもらいながら、自身の感性と言葉を磨き、より良い表現ができるよう努めていきたいと思う。

 


④文章修行のために

 

最後のこの章では『動詞を中心にすえる』という項目に新しい発見があった。「動詞がいかに文章に躍動感を与えるか」ということが書かれている。

 

これについても、これまで私は意識したことがなかった。ただ思い返してみると、たしかに動詞をうまく使っている文章には、読み手に映像を想起させる力があるように思える。

 

文章を向上させようとするとき、私は得てして修飾語や形容詞などに着目してしまいがちになるのだが、実は足下を支えている動詞にこそ、成長のヒントが隠されているようだ。

 

よくよく考えてみると難しいことではあるが、今後文章を書く上では、頭の片隅に置いておきたいなと思う。

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さて、長々と書いてしまったが、とにかくとても良い本だった。読み物として面白いので、終盤は読み終わるのが惜しくて堪らなかった。今後も常にそばに置き、折に触れては読み返そうと思っている。

 

文章に少なからず興味を持つ人であれば、おそらく大多数が愉しめる内容だと思うので、興味がある方には是非とも手にとってみることをお勧めしたい。