いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ほっぺた

私の顔をぺたぺたと触る娘。ひとつひとつのパーツを指でなぞっていく。

 

「おくち」

「はな」

「めめ」

「まうげ」

「・・・ここ」

 

口、鼻、目、眉毛ときて、おでこで止まった。私は「お・で・こ」と教えてあげる。「お・れ・こ」と娘も復唱する。

 

次に、彼女は両手の人差し指を立て、私の両頬をぷにっと押した。

 

「ほってた」

 

彼女は笑顔で言う。

 

「ほっぺた、でしょ」

「ほってた」

 

更に笑顔が深まる。どうやら最近ほっぺたを覚えたようで、それを披露できたことが嬉しいらしい。

 

それにしても、身体のパーツもずいぶん覚えたものだ。頭、手、足、お尻などの大きな部分はもちろん、このように詳細パーツまでどんどん覚えていっている。娘にいろいろ指示をするのも、だいぶ楽になったものだ。

 

娘はなお楽しそうに、今度は自分のほっぺたをぷにっと指さした。

 

「○○ちゃんの、ほってた」

 

再び私の頬をぷにる。

 

「ぱぱの、ほってた」

 

にぃっと歯を出す娘。

 

「いっしょ!」

 

潤いも弾力も違うだろうが、間違いなく一緒だ。うん、同じ人間だ。なんだか私まで嬉しい気持ちになった。

 

試しに娘の瑞々しいほっぺをぷにっと押してみる。すると、溌剌とした弾力で力強く私の指を押し返してきた。

 

その予想以上の力強さに、私は思わず彼女の中に渦巻く生命力を想像した。頼もしいな、そう思った。