いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

プレイバック

レイモンド・チャンドラー著『プレイバック』を読了。
f:id:pto6:20181201103653j:image
探偵フィリップ・マーロウ作品のシリーズ7作目。ちなみに著者のチャンドラーはこの作品を最後に70年の生涯に幕を降ろす。つまりこの作品は、彼にとっての遺作でもあるのだ。

 

チャンドラー作品は、村上春樹がしばしばその文章を絶賛していたので読み始めた。そして実際に読んでみると、他にはないその魅力的な文章に、私もすぐに虜となった。

 

チャンドラーは『ミステリー』小説のフォーマットを使って『純文学』作品を書いている。ゆえに、ミステリー好きのライトなファン層から、純文学好きのコアなファンまで、幅広い読者を獲得している。

 

そのようないいとこ取りの作品なので、私も『エンタメ性』と『文学性』、その両方を一気に味わいたい気分のときに、チャンドラー作品を手に取ってきた。

 

これまでに『ロング・グッドバイ』、『大いなる眠り』、『プレイバック』という7作中3作(すべて村上春樹の翻訳)を読んだことになる。ゆっくりと味わいながら、全作読破していく予定だ。

 

チャンドラーの文章はとにかく洒脱である。ハードボイルドな探偵が主人公ということもあるのだが、繰り出される比喩がことごとく機知に富んでいて、会話や台詞がカッコいい。

 

今作はシリーズの中では比較的「地味」と言われている作品なのだが、それでもチャンドラー節は相変わらず冴え渡っており、私は最後まで楽しく読むことができた。

 

物語の終盤、日本で人気のあの名台詞が登場する。

 

厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない

 

たしかに味わい深いカッコいい台詞だと思う。名台詞だけに、翻訳においては気をつかったと訳者が語っていたが、なかなか素敵な訳し方ではないだろうか。

 

さて、本作を読み終わり、昨日は帰り道に本屋に寄ってきた。次は何を読もうかな、と選んでいる時間は私にとっての至福の時間だ。

 

最近、文章を書くのがこれまで以上に楽しくなってきたのは、きっと良い読書ができているからだろう。この調子で、もっともっといい本たちに出逢っていきたいな。