いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

カマキリを巡る冒険

昨日、無性に娘と虫取りに行きたくなった。

 

きっかけはふたつあった。ひとつは、前日マンションの廊下でカマキリを見つけたことだ。妻が見つけ娘に教えると、彼女は興味津々な様子でそれを観察していた。

 

さすがに触るのは怖がっていたが、その一挙手一投足に目を輝かせていた。教育テレビの歌でカマキリを題材にした愉快な歌があって、娘はそれが大好きなのだ。

 

ふたつめのきっかけは、その朝に見ていたライオンキングの動画だ。娘は少し前からその中の挿入歌『ハクナ・マタタ』が大のお気に入りなのだ。その歌が流れるところで、シンバ達が虫を食べるシーンがある。そこでも娘が一瞬映るカマキリの姿を発見し、大興奮していた。

 

私はそのとき思い立った。よし、カマキリを捕まえて、娘に見せてあげようと。そのあとの行動は早かった。

 

すぐに服を着替え、妻と娘と共に外に出た。近くの100均で虫かごを買い、スーパでおのおのの昼食を買った。本当は虫網も買いたかったのだが、シーズンが終わったからか見つけられなかった。

 

それらをもって自転車で緑地公園に向かった。もう9月だっていうのに真夏のような暑さだった。青空が眩しくて、入道雲には迫力があった。これ以上ないほどの虫取り日和だろう。

 

ただ実際に虫を探しはじめてみると、すんなりとは行かなかった。虫を探すこと自体が久しぶりすぎて、どこを探せば良いかも忘れてしまっていたのだ。結局は妻のアドバイスに従って広場近くにあった草むらを歩いた。すると、ぴょんぴょんと何匹かのバッタが跳ねた。

 

彼らが飛ぶたびに甲高い悲鳴が上がった。私のである。そのたびに娘は驚き、妻からは白い目で見られた。

 

大きなバッタを捕まえようとするも、いざ手で掴もうとするとびびってしまった。結局は中くらいのバッタをなんとか捕まえ、カゴに入れた。娘はおそるおそるといった様子でカゴの中を覗き込んでいた。

 

その後テニスコート脇の草むらでも小さなバッタを捕まえ、収穫は2匹だった。カマキリは最後まで見つけられなかった。草むらの他にも、足場の悪い森の中を散策したり、娘と一緒にいろいろと歩き回った。

 

ひとしきり散策した後は、皆で日陰に座っておやつを食べ、近くにあった遊具エリアで娘をしばし遊ばせた。

 

公園から帰る際には、カゴを開きバッタたちを逃がしてあげた。中くらいの方は勢いよく飛び出していき、小さい方はぴょんぴょんとあたりを跳ね回っていた。

 

娘は小さいバッタをしばらくのあいだ観察していた。最後は手を振って別れた。カマキリは捕まえられなかったが、娘に虫を見せることができてほっとしていた。

 

それにしても、カマキリはいったいどこにいるのか。

 

思えばふいに出会うことはあっても、見つけようと思って見つけたことはこれまでにもないような気がする。いつか捕まえよう。彼を巡る冒険はこれからも続く。