いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ブルックリン・フォリーズ

ポール・オースター著『ブルックリン・フォリーズ』を再読した。おそらくはこれで二度目の読了だろう。

f:id:pto6:20191107082333j:image
ここのところハードカバーで所有しているオースター作品の読み返しをしていたのだが、その第三弾である。この小説は、オースター作品の中では珍しく喜劇的でゆるやかな語り口が特徴となっている。

 

前回この本を読んだのはだいぶ前だったので、例によって物語の展開はあまり覚えていなかった。しかしその読後感の良さだけはなんとなくは覚えており、いつの日か読み返すことを楽しみにしていた。

 

年老いた病み上がりの男が、生まれ育った街に立ち返り、そこで新しい人生を築いていくまでの物語だ。

 

実際にこうして読み終えてみると、期待に違わず爽やかな読後感を得られた。しかし思っていたよりも軽やかな内容で、いささか物足りなさも感じてしまった。

 

おそらくは、その前に読んだオースターの2作品(幻影の書、闇の中の男)に重量感があったため、そのように感じてしまったのだろうと思う。

 

しかし、その読みやすさはやはり他の作品には無い魅力に思えた。細かい章立てもされており、空き時間にちびちびと読み進めるのには打って付けの作品だった。

 

そして基本的には軽快な物語の中にも、時に重いテーマも織り交ぜており、特に最後の9.11の描写などは、幸せな日常との振り幅がある分、強い印象を心に残した。


さて、連続して3作を読み返したことで、ひとまずオースター熱は収まった。ただ既読本を読み返すことの楽しさに目覚めてしまった為、しばらくは別の作者の本の読み返しもしてみようかと考えている。ワクワクするな。