いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

オーギー・レンのクリスマス・ストーリー

ポール・オースターの『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』読了。挿絵はタダジュンである。

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既に読んだことがある作品であったが、素敵な絵本に生まれ変わったということで我慢できずに購入してしまった。実際に手に取ると、所有する喜びを十全に満たしてくれる。片手サイズほどのこじんまりした作りで、思わず本棚に立てかけ飾りたくなる。

 

短編小説なのですぐに読み終わる。日をおいて既に二回読み返した。多くの人が想像する心温まるクリスマス・ストーリーとは違い、わかりやすい結末が用意されているわけではないのだが、じんわりと赤みを帯びた木炭のような火種が、読み終えた後、心の中に残っていることに気づかされる。

 

そのほかほかした余韻がとにかく心地よく、また、しっかりとした炎になりきれていない、もどかしさも解消したいとの想いにも駆られ、思わずなんども手に取りページをめくらされるのであった。

 

絵も一頁ごとにふんだんに挿入され、物語のイメージを膨らませてくれている。本作品は『スモーク』という映画ですでに映像化されているが、またそれとは一味違った世界観が豊かに提示されている。

 

私は『スモーク』も大好きでDVDを所有している。小説を読み終えた後、改めて映画のほうも見返したくなった。クリスマスがもう少し近づいたころにでも、ゆっくりと見返してみようと思っている。

 

あまりに素敵な一冊なので、誰かにプレゼントしたい気持ちが沸いてくる。わかりやすいハッピーエンドで締めくくられるクリスマス・ストーリーではないので、送る相手も選ばなければならないのだが、何度も読み返すうちに、この作品の懐の深さと魅力に気づいてくれる人も少なくないのではとも思う。

 

クリスマス付近に誕生日がある母に贈ってみようか。あと何回か読み返しながら、考えてみよう。