それもかなり真剣めにだ。というのも、母親が村上春樹の最新作を読み面白かったというので、誕生日プレゼントとして今作を贈ったからである。
もともとは『騎士団長殺し』を贈ろうとしたのだが、上下巻という長さを母親が不安がっていたのと、タイトルも誕生日に合わない物騒さを抱えていたので、急遽こちらの作品に変更していた。
私が初めてこれを読んだのは大学生のときで、最後に再読したのも結婚前ということで、ほぼストーリーは覚えていなかった。それでも面白かったという感覚は残っており、母親に贈った手前、感想が届くことも想定して、私も読み返しておくことにした。そして、図書館ですぐに借りることができた。
筆者の初期作品なので、若さゆえのニヒルな語り口や描写もあるが、読みやすい文体は既に確立されており、すいすいと読み進める事ができた。
最近の作品と比べてしまうと、物語的の強度的に甘さを感じてしまうところも多少はあったが、総合的に言えば面白く読めたので、母親への贈り物に選んだことに対しては、ひとまずほっと胸を撫で下ろした。
村上自身も初めて書いた長編作品として思い入れがあるとのことを語っていたので、そういった面も踏まえ、良い作品ではないかと思う。贈り物がきっかけだったが、改めて読み返してみて楽しむことができた。