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オリヴァー・ツイスト

ディケンズの『オリヴァー・ツイスト』読了。
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『大いなる遺産』で衝撃を受けて以来、自身二冊目となるディケンズ作品である。訳者は前回同様に加賀山卓朗。近年に出た新訳版である。

 

多大なる期待のもと読み始めたが、結論からいえば、『大いなる遺産』ほどの衝撃を今作から受けることがなかった。

 

ディケンズ作品は「大きなプロットが弱い」と批評されることが多いと聞くが、今作ではまさにその言葉が頭に浮かんだ。巻末の解説でも触れられているが、結末に向けたプロットが些か強引であり、いびつさも節々から垣間見れる。

 

正直なところ、半分を過ぎるあたりまでは主軸となる物語に対してワクワク感をあまり抱けなかった。だいたいはこうなって、こんな結末になるのかな、とある程度の予想がつき、それが大いに裏切られることがなかったのである。

 

ただ今作を読んで、ディケンズは偉大なる作家である、という確信を深めたのも事実である。

 

全体プロットは先に述べたようであれ、人物は活き活きと描かれており、各章における表現や描写には感銘を受ける箇所が数多あった。

 

考えてみれば、全体プロットが弱いのに最後まで読者の興味を離さないというのは、圧倒的筆力があってこそなせる業だ。文章自体に魅力があるということは、どんな物語を書いても一定以上には面白いということと同義なのである。

 

そんなわけで、他のディケンズ作品も引き続き読んでみるつもりである。同じ翻訳者が訳した代表作のひとつは既に購入済みだ。

 

それにしてもその作者とどの作品で出会うかは重要なことである。もし私が今回の作品でディケンズに出会っていたら、他の作品を読もうとまでは思わなかったかもしれない。

 

前回の『大いなる遺産』の感動があるからこそ、次の作品も期待して手に取れる。今後も作家との出会い方には意識しておきたいと思う。