いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

リヴァイアサン

ポール・オースターの『リヴァイアサン』を再読。
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これで読むのは4回目くらいだろうか。なんど読んでも面白い。場面場面は覚えているのだが、その巧みな展開には毎度のこと驚かされてしまう。

 

この物語は、オースター初期作品の主題でもある"偶然"の連鎖によって展開が生まれていく。あり得ないような偶然が不運な結末まで次々と連なっていくのだ。

 

それでもリアリティを感じさせられるのは、登場人物たちの言動に説得力が伴っているからだ。それだけよく人物が描かれているということなのだろう。

 

精巧なプロット、秀逸なストーリーテリングが本著の売りだが、私は読んでいてオースターの文章の魅力を再確認させられた。とにかくリズミカルで読んでいて心地よいののである。時に書き込みが過ぎると感じるような部分もないわけではないのだが、それでも小気味良いリズムでなんなく細部まで読ませてしまうのだった。

 

選ばれているひとつひとつの言葉も的確で、そのウィットに富んだ表現にはインテリジェンスを感じさせられる。物語も面白くて、文章も上手い。流石は現代のアメリカを代表する作家のひとりである。

 

オースター作品に関してはここ最近、後期の作品ばかりを読み返していたが、久しぶりに初期の作品も読み返したくなった。何か1冊を読むと続けて他の作品も読み返したくなるのも、オースター作品の特徴かもしれない。