いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

カブトムシの幼虫

飼っているカブトムシの幼虫が6匹に増えた。

 

今日も緑地公園に赴いたのだ。刈りたての芝生が放つ生気溢れる香りを嗅ぎながら、拠点のテントから今日も娘と虫探しに出かけた。

 

娘が思うがままに園内を進み、よさげなポジションを見つけると木の枝で土を掘り返した。すると、そんな私たちに温和そうな老人が声を掛けてきた。

 

「カブトムシならあっちでたくさん捕れるよ」

 

清潔そうな服装に身を包んだ老紳士に見えた。柔和な表情を浮かべ、特に怪しげな雰囲気はない。私は親切な声かけに対し意味も無く邪険に扱うのは失礼だと判断し、彼の提案に乗ることにした。

 

老人についていくと、そこには見るからに完璧な腐葉土が敷き詰められていた。それこそカブトムシ飼育用の土として売られているような土であった。

 

老人は枝で地面を掘り始めた。すると、さっそく大きな幼虫が土の中から現れた。娘が歓喜の声をあげる。その後も、掘れば掘った分だけカブトムシの幼虫がゴロゴロと出てきた。

 

私も最初は気持ちが高まったが、あまりのインフレ状態に、感動は徐々に衰退していった。娘はもっともっと掘り返そうと張り切っていたが、これ以上見つけたところで飼えないよと言い聞かせ、なんとかその場から娘を連れ帰ることができた。

 

その老人は、虫取りに興じる親子を見つけては声をかけ、そのエリアへと連れてきているようだった。人恋しいのかもしれない。徐々に人が集まってきて、このエリアがすべて掘り返されるのも時間の問題であるように思えた。

 

持っているゲージでは6匹の幼虫は飼えないので、帰り道に大きなサイズのゲージを買い、そこで幼虫たちを飼うことにした。もともと飼っていた1匹もそこに入れ、小さいゲージはお役御免となった。改めて、成虫まで大切に育てたいと思う。

 

息子が大きくなり昆虫に興味をもつ歳になったなら、彼とも一緒に幼虫を捕りたい。そのときまで、あの場所が荒らされずに残っていることを願う。