いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

埋葬

優しく土をかぶせると私は立ち上がった。

 

すると娘がうしろからTシャツの裾を引っ張る。「パパ、コレしなくていいの?」。そうだった。私はふたたび娘の隣に身をかがめる。

 

娘とふたり合掌して目を閉じる。「ありがとね」、そう小さくつぶやいた。本当に、この夏を彩るたくさんの思い出をつくってくれた。

 

飼っていたカブトムシ、最後の1匹を本日埋葬してきた。メス2匹が数日のあいだに連続で死に、あとはオス1匹だけが残った状態だった。

 

最後は突っ伏すような姿勢で穏やかそうな死を迎えていた。餌は少し口をつけただけでほとんどが残っており、眠るように力尽きたのだろうと想像した。

 

スコップと空っぽになった虫カゴを持ち、娘と公園を後にした。さみしいね。そう呟いた娘の声はどこか演技がかってもいたが、それでも幾ばくかの哀愁を帯びているように感じた。

 

来年の夏、生まれ変わった姿でまた会えたら。