いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

夏のはじまり

ソファに寝そべり文庫本をひろげる。

 

足元のせんべい布団には息子が横向きにまるまり、すやすやと寝息を立てている。昨夜の熱もだいぶ下がり、症状にも快復の兆しがみえている。

 

家にいるのは私たちふたりだ。妻と娘はショッピングに出掛けた。妻も休日くらいは羽を伸ばしたかろうと、私が息子のお守りをかってでたのだった。

 

とはいえ、ママが出ていき私とふたりきりになると、息子はすぐに眠りはじめた。体調の回復には睡眠が一番なので、彼が寝たいときにはできるだけ寝かせてあげたいと思っている。そんなわけで、なるだけ静かに過ごそうと本を読み始めたのだが、気持ちよさそうに眠る息子を横目で眺めているうちに、私までもが次第にまどろみに包まれていった。

 

ソファに枕を置きその上に頭を据えると、まぶたの重みに堪えきれなくなった。結局は妻たちが帰ってくるまで、息子とふたり昼寝をしてしまっていた。

 

リビングに飛び込んできた娘の手には、ショットガンのような大きな水鉄砲が握られていた。そういえば、娘は今日から夏休みにはいったんだっけ。

 

日が傾き少し涼しくなった頃、近くの公園まで家族みんなで出掛けた。娘が放つ水圧じゅうぶんの攻撃を全身に浴びて、私のTシャツにはいびつな迷彩もようが浮き上がっていた。しかしそれも、遊び終わり家に帰り着く頃には、すっかりと消えていた。

 

賑やかな夏がここに始まる。そんな気配を感じた。