いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

ドレスを着た娘

何を見ているの?窓を覗く娘に訊ねた。

 

「ないかなーっておもって、さがしてるの」

「ないかなーって、何が?」

「ふしぎ♪」

 

そんな素敵な台詞で幕を開けた本日。娘は恐竜みたいという雲を見つけ、ふしぎふしぎと笑っていた。

 

さて、そんな本日はスタジオアリスに行ってきた。もうすぐで1歳と5歳を迎える子供たちの写真撮影をしたのだ。特に息子の方はこのコロナのせいで、これまで写真館での撮影ができていなかった。

 

妻のアラームが鳴らない(設定までしてオンにし忘れていたらしい)という騒動はあったものの、なんとか時間通りにスタジオに到着した。

 

娘はテンポ良くドレスを選び、息子の衣装もすぐに決めることができた。さっそく着付けが始まる。娘は目を輝かせ、ドレッシングルームからは楽しそうな黄色い声が漏れ出ていた。

 

まずはライオンの着ぐるみを被った息子が出てきた。骨つき肉を掴ませ撮影する。思ったとおり、食いしん坊な彼にはぴったりな格好であった。

 

次いでピンクのロングドレスに身を包んだ娘が、ハニカミながらカーテンの向こうから現れた。プリンセスのように上品にスカートをたくし上げて歩く。私の目の前に立つと、スカートをなびかせてくるりと一回転してみせてくれた。

 

そんなお姉ちゃんをエスコートするために、息子もプリンス風の衣装に着替える。姉弟のツーショットを撮るのだ。娘はバッチリだが、息子が次第にぐずり始めた。それでもなんとか撮影を終え、それぞれのソロショットに取りかかる。

 

そこまでで息子の出番が終わり、あとは娘の独壇場となった。お色直しをした彼女、今度はフリルが可愛いショート丈の水色のドレスで登場した。

 

カメラマンにそそのかされ、こなれた様子でポーズをとる彼女。セットした髪型や施した化粧の効果もあり、私の目にはとても大人びて見えた。もう一人前の女性にしか見えないのだ。

 

両手でスマホとホームビデオの撮影を回しながら、私は彼女の成長に、驚きと戸惑いを覚えていた。

 

最後のドレスアップはアリエルだ。スタッフさんに抱きかかえられ、人魚と化した娘が登場した。嬉しそうに合成用のグリーンバックの前でポーズをきめる。娘にとっては夢のような時間であっただろう。

 

撮影後は気に入った写真を選び、いくつかのアイテムとデータを購入した。なかなかよい選択ができ、予算以内に金額も収まったので満足できた。

 

写真に写った娘を改めて見ても、やはり普段見ている彼女よりもぐっと大人びて見えた。先ほど沸いて出た複雑な感情が再来する。それに“喜び”とラベル付けをし、強引にも胸の中での折り合いをつける。

 

その後、妻とのショッピングを終え、夕暮れの中で帰路にたった。駅から家までの道は、娘にねだられるがままに彼女を抱っこして歩いた。

 

彼女の髪から漂う甘い匂いを吸い込みながら、その小ささを確かめるかのように、どこか名残惜しい気持ちでゆっくりと歩いた。腕の中ではしゃいでいる彼女は、私がよく知る4歳の娘に戻っていた。