いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

高い高いの刑

1歳の息子はなかなかの怖いもの知らずだ。

 

ソファによじ登っては無謀にも飛び降りるし、外に放つとどこまでもグングンひとりで進んでいく。

 

そんな彼が唯一苦手だったのが『高い高い』であった。ゆえに、彼が悪さをしたときなどには『高い高いの刑』をたまに執行していたのである。

 

最初の1回目はキャハハと笑っている彼だが、そのまま降ろさずに2回目を持ち上げたときから目に見えて表情が強張る。3回目持ち上げた時には恐怖が顔に浮かぶので、そこで勘弁してあげるのだった。

 

今夜も息子は再三の注意を聞かず、何度戻しても襖を引き出しては遊んでいた。この前はその襖を押し倒してあわや怪我をするところだったのだ。そのため「やっちゃダメ」なのだと、身にしみてわからせる必要があった。

 

そこで妻が『高い高いの刑』に乗り出した。しかし、1度、2度、3度と持ち上げてみても、息子はキャハハといつまでも笑っていたのである。

 

まさか克服されたか。私と妻は不安になって顔を見合わせた。そこで妻に代わって私が『高い高い』をやる。しかし彼は変わらず楽しそうに笑っていた。

 

可能な限り高く持ち上げてもみたが、一瞬表情を曇らせただけで、すぐにまた彼は笑い出した。床に降ろしてからも、彼はもう一回やりたいとでもいうように、自分でスクワットのような上下の動作をしてみせ、私にリトライを催促していた。

 

ついに唯一の弱点まで克服されてしまった。わんぱくな彼を制するため至急別の方法を探さなければ。