いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

タコ以下の知性

少し前に妻から聞いた話だが、2、3歳までの子供はタコ以下の知性らしい。それを聞いて以来、息子のおバカな行動を目にする度そのことを思い出す。

 

タコはなかなか知性が高い動物らしいのだが、「このタコ!」という悪口があるくらいだから、人間にはあまり上等な生物とは見なされていないだろう。

 

私の中でのタコの評価もそうであるので、ゆえに、それ以下の知性だという息子を見ていると、なにをしでかしても妙に納得してしまうのであった。

 

目の前の玩具に惹かれては手に取り口に入れる。むしゃむしゃ食べるが味がしないので、バンバンと叩きはじめる。その反動で自らが体勢を崩し、後ろに倒れる。そこにあった柵にぶつかり、なんだこれはとそちらに興味を移す。今度はその柵に、寄り掛かりながらハムハムと齧り付く。手を滑らせ尻餅をつき、落ちてた玩具を踏みつけて、びえーんと泣き出す。なるほど、確かにタコ以下かもしれない。

 

彼は欲望の赴くまま、リスクだなんて考えもせずに即行動に移す。天敵から身を守るという概念もないので当たり前だろう。パパとママがいれば自分の身は安全だ。それゆえ私たちが離れようとすると、不安になるのか、泣き出してしまうのだけれど。

 

この文章を書いている間にも、彼の手にはブロックが握られ、それが口の中へと押し込まれている。最近四本の歯を手に入れたので、今度こそは食べられるのでは、と思っているのかもしれない。

 

こんどタコを見たら、これまで抱いたことのない尊敬の念を抱くかもしれない。息子も将来こんな立派になるのかあ、クネクネと動く海洋生物をうっとりと眺める自分を想像し、可笑しさが込み上げる。ただタコ以下の息子が浮かべる無垢な笑顔は、比類するものがないほどに、圧倒的な可愛さなのだった。